調査の概要
在校生パネル調査は、附属中等教育学校の生徒たちが在学中に毎年度行われるものです。附属中等教育学校の特徴である総合的な学習への取り組みが、生徒たちの価値観や探究的な態度、市民性の発達に対しどのような影響を持ちうるのかを検討するために、学校教育高度化・効果検証センター 効果検証部門と附属中等教育学校が連携し、2016年度より継続的に実施しています。以下、2016年度から2018年度までの3時点分の調査結果を報告いたします。
これまでの調査結果
在校生の生徒たちの意識
- デモグラフィックデータ
いずれの年度も、各学年110-120名ずつ、全校で700名前後の方々にご回答いただきました。2018年度から調査項目の削減や調査対象の変更(一部の学年のみに尋ねる等)が行われたため、ここでは3年分のデータが揃っている項目および学年についてのみ提示しています。
- 総合的学習への興味
いずれの学年においても、年度問わず、各総合的学習に対して70%程度かそれ以上が「興味を持って取り組んだ」と回答しました。2017年度の1年生の回答(東大探検5.1%;情報とメディア46.6%)が低いのは、当該年度のみ農業を中心に1年生の総合学習を展開し他の内容を簡略化したためと考えられます。また、総合的学習の集大成である卒業研究に対する興味が年度を追う毎に低下している点が懸念されます。総合的学習を「好き」と回答した生徒の割合は、全ての年度で社会科に続き高くなっています。どの年度も70%近い生徒が総合的学習を好きと回答していることから、東大附属における総合的学習が生徒の興味を惹く科目であることがうかがえます。
- 総合的学習における具体的な活動
総合的学習における活動は、既存の資料からの情報収集による学習、自分自身の経験を通した学習、他者の経験やその分野に精通した人物の見聞を通した学習、他者との相互作用による双方向的な学習など多岐にわたります。いずれの活動においても、学年や学習内容を問わず多くの生徒が積極的に従事してきたことがうかがえます。
文献やインターネットからの情報収集は、多くの生徒が行なっています。特にインターネットを用いる生徒が80-90%以上と多く、本や新聞以上に生徒の情報収集手段として定着していることが伺われます。前年度までと比較すると、2018年度の1-4年生は、既存資料からの情報収集を行った生徒の割合が若干低くなっています。
体験的活動は60-70%程度の生徒が行なっており、年度による違いはあまり見られませんでした。時間的・金銭的資源を必要とする活動のため学校側が提供するカリキュラムを通して体験活動を経験する生徒が多いことが、年度による違いが小さい要因と考えられます。年度毎の活動差が小さい中では、2018年度の1-2年生における現地での観察・調査,並びに1-4年生における体験的活動の多さがやや目立ちました。 年度によって総合学習入門や課題別講座の内容に違いがあり、それらを反映しているものと考えられます。
2016年から2018年度の3年間で見ると、年度を重ねる毎に他者からのインプットを行なった生徒の割合が高くなる傾向が見られました。特に2018年度には過半数の生徒が専門家から話を聞く機会をもつことができたようです。他者へのアウトプットは総合的な学習のカリキュラムに組み込まれているため、テーマおよび年度にかかわらず、多くの生徒が自分の考えを他者に話したり、まとめたものを発表する機会をもったようです。
- 総合的学習の主観的な効果
総合的な学習による本調査で測定した学習効果について、年度問わず、尋ねた全ての能力について約70%以上の生徒が主観的な効果を表明しています。特に、複数の情報から自分で考えて判断する力や主体的に学ぶ姿勢が身についたと実感している生徒が多いようです。また3年間の変化として、例えば、2年生(2016年度)はいずれの能力に関しても約70-90%の生徒は効果があると回答しています。他人の考えを聞いて自分の考えを見直す態度に関しては経年的に上昇傾向にあり、5-6年生での変化も継続してみたいところです。
4年生(2016年度)は3年目が卒業研究に取り組んだ年でした。そのため、卒業研究での苦労、あるいは思うような研究ができなかったという自己評価から、総合的な学習の主観的効果が3年目に低くなった可能性が考えられます。
- 過去の報告データ(2016年度分)はこちら